ほんのり甘く搾りたてに近い牛乳やクリーミーで濃厚な味わいののむヨーグルト。
皆さんは酪農家さんが一から作った「本物の味」を口にしたことはありますか?
福岡県糸島市には、酪農家さんが作った「本物の味」を人々に届けるため、酪農から製造、販売までの全てをこだわり手掛けている株式会社糸島みるくぷらんと(以下:糸島みるくぷらんと)さんがあります。
こだわり抜かれたその味は人々に愛され、スーパーはもちろん、福岡空港内のラウンジや福岡市内のホテルにまでも取り扱われるようになりました。
創業時から愛情を紡いできた会社には、どんな歴史や苦労、そして商品へのこだわりがあるのでしょうか。
今回は糸島みるくぷらんとの宮﨑英文社長にお話をうかがいました。
ぜひ最後までご覧ください!
株式会社糸島みるくぷらんとさんのHPはコチラ!
苦しい時代が生んだ糸島みるくぷらんと
糸島みるくぷらんとは酪農家さんたちが集まってできた会社であり、宮﨑社長ももちろん酪農に従事していました。宮﨑社長は当時のことをこう話しています。

愛情を込めて育てた牛さんから搾った牛乳が処分されてしまうなんて、酪農家さんからしたら心苦しいものですよね。
しかし、どうやらそこからが、糸島みるくぷらんとの始まりのようです。

そこから、なんとか消費の拡大を図ろうと、当時の糸島地方酪農業協同組合でたくさんの話し合いを重ねました。そして、話し合いの結果、我々酪農家も牛乳の販売に手がけてみようということになったんです。
しかし、資金もありませんし、スタートラインもどうしたらいいか…。あの時は、何も分からない状態でした。そこで委託製造から始めてみようと、たくさんの牛乳工場を探しまして、唐津の村山ミルクプラントにお願いしました
たくさんの牛乳工場がある中で、どうして唐津の村山ミルクプラントさんにお願いしたのか。
私はこの疑問をぶつけてみました。

糸島みるくぷらんとの「こだわり」は、この時から健在しているのですね。
しかし、そのこだわりの牛乳を広めるにはかなりの労力と時間がかかったそうです。

委託製造を始めてから10年ほど、酪農家をしながら営業活動をするという日々が続きました。職員も雇えなかったので、酪農家自ら牛乳を持って宅配の営業を一軒一軒少しずつやっていましたね。
まずは宅配、それからグループ配達を行い、糸島から福岡市へ、ゼンリンの地図を持って広げながら少しずつ伸ばしていきました。本当に少しずつですが、できる範囲やったんです。この時期は、本当に苦労しながらやっていたなと思います
やはり、酪農の仕事をしながら、営業活動をするのは大変なことなのでしょうか。

酪農家は基本的に朝から夜まで働いています。牛さんから牛乳を搾るだけでも朝と晩、2回ありますし、盆も正月も休みはありません。
なので、一年中ずっと働いていますよ。今はヘルパー制度というものがあり、お手伝いをしてくれる人がいるのですが、当時はそんなものもないですからね。なので、休みなんてものも全くなかったです。そんな中で営業活動を続けていくのは大変でした

糸島みるくぷらんとの人気商品「のむヨーグルト」の誕生
酪農家としての仕事と営業活動を同時並行していく中、宮﨑社長はあるのむヨーグルトに出会います。

ある時、新潟のヤスダヨーグルトに出会い、実際に飲んでみる機会があったんです。すると、そののむヨーグルト、とろみがあって濃厚な味わいで美味しかったんですよね。
その時“我々もこんなのむヨーグルトを作ってみたい!”と思いました。そこから、のむヨーグルトを作ろうと取り組むことになりました
糸島みるくぷらんとの人気商品であるのむヨーグルトは、ヤスダヨーグルトさんがきっかけだったのですね。とろみがあって濃厚な味わいを参考に…人気商品になるのも納得です。
しかし、人気商品の誕生の裏側にはたくさんの苦労もあったようです。

のむヨーグルトを作るとなると、工場を建設するための設備投資をしなければならなかったんです。そのためには、酪農組合からの協力をいただく必要がありました。
しかし、酪農組合からの賛成を得ることが非常に難しく、なかなか思い通りにはいかなかったんですよね。非常に難しかったです
酪農組合からの賛成をなかなか得られず、苦労したと語る宮﨑社長。
しかし、それでも諦めることなく行動し続けました。

なので、酪農組合の方を説得するために、ヤスダヨーグルトへ何度も連れていきました。実際に見てもらい、ヤスダヨーグルトの魅力を伝えることで賛成を得ようとしたんです。
すると、何年かかかりましたが、酪農組合からの協力を得られるようになりましたね。ヨーグルトを作る技術は、ぜひやってほしいとのことでヤスダヨーグルトさんから快く指導してもらえましたし、平成14年にやっと工場を建設することができました。それは創業から10年経ったときのことでした
賛成をなかなか得られなくても、「のむヨーグルトを作りたい」という想いを実現させるために何年もかけて行動し続けた宮﨑社長。
私はその姿勢に、酪農に対する愛情と情熱を感じました。
このように作られたのむヨーグルトは、人気が高く広まるのもはやかったそうです。


糸島みるくぷらんとの美味しさは愛情が秘訣
私の家庭には「お茶より牛乳を飲みなさい」という、とても不思議なルールがあり、食卓には牛乳が毎日置いてあるような環境で育ちました。
もちろん牛乳は大好きですし、毎日のように飲んでいたので、糸島みるくぷらんとさんが作るこだわりの牛乳とはどんな味がするのだろうと興味津々。
そんな中、実際に飲んでみて真っ先に思ったことは「こんな牛乳飲んだことない!」です。
今まで色んな牛乳を飲んできましたが、普通の牛乳とこんなにも違うのかと衝撃を受けました。
味はほんのり甘くて濃厚。
時間と手間をかけて作られているのが、すごく伝わる牛乳でした。
ここからは、そんな糸島みるくぷらんとさんが作る商品の美味しさの秘訣に迫りたいと思います。
ー酪農から手掛けているということで、酪農におけるこだわりは何かありますか?

ー牛さんの餌までこだわる理由はなんでしょうか。それは美味しさに繋がるのでしょうか。

そうですね。餌は牛さんの健康や乳質に繋がります。
例えば、牧草中心で育てれば脂肪分が高くなるように、牛乳の成分が少しずつ違ってくるんです。ちなみに、今は大きな酪農家しか残ってないため、どうしても自分のところの牧草だけをあげるのは限度があり、輸入の乾草や、干し草も購入しています。
もちろん餌にもこだわりがありますが、何より、愛情を込めて牛さんを育てています。
そう宮﨑社長がおっしゃったとき、糸島みるくぷらんとのHPを思い出しました。
HPを覗いてみると、牛さんへの愛情がひしひしと伝わってくるのです。
「牛にはみんな名前がある」「牛の気持ちに寄り添う」「牛たちは、こどものように可愛くてたまらない存在」…
糸島みるくぷらんとさんでは、どうしてそのように牛さんへの愛情を大切にしているのか疑問に思いました。

牛さんは家族みたいなものです。酪農家は一年中毎日牛のお世話をするのですから、我が子のように大切な存在ですよ。
言葉を発しないので、やっぱり人間が観察してあげて、異変に気付いてあげたり、具合悪そうだなと感じたら治療してあげたり。牛床の管理も清潔に保って、快適にストレスがたまらない飼育方法をしているから味も少しずつ違ってくるかなと思います
365日の毎日を牛さんと共に生活している。それは、本当の家族よりも長い時間を共にしていると言えます。
だから、言葉の通じない相手であっても、愛情たっぷりに我が子のように育てているのだと納得しました。
ー製造方法にはどんなこだわりがありますか?

例えば、普通の牛乳は高温殺菌でホモジナイズ加工をしているのですが、糸島みるくぷらんとは低温殺菌でノンホモ牛乳(脂肪球を砕かず殺菌するだけの自然に近い牛乳)というしぼりたてに近いものを作っています。
また、のむヨーグルトに関しては、原料を全て生乳にしています。原料に水を加えず、生乳のみで発酵させます。普通のヨーグルトは香料や安定剤を使ったりしますが、酪農家が作るヨーグルトですので基本的には生乳を100%使っています
「酪農家が作る本物の味」はなんとしてもプライドを持ってお届けする。これは糸島みるくぷらんとの創業時から何一つ変わらないものです。


飲んでもらって美味しかったよなどの感想を頂く瞬間が、なによりも嬉しいです。
以前病気をしまして週に2.3回病院に行っていたのですが、そこの看護師さんから“先日貰った初めてのお給料で、糸島みるくぷらんとの、のむヨーグルトを買い、里に送ったら大変喜んでいました”とわざわざ報告を頂いたんです。その時は本当に嬉しいと思いましたね。我々が何年もの間こだわって思いをかけて作ったぶん、皆さんに理解されて嬉しいんです
酪農家から糸島みるくぷらんとを創業し、牛乳、そして人気商品ののむヨーグルトを作るには、たくさんの苦労と時間がかかりました。
酪農家自ら商品を作ることに、なかなか賛同を得られないことも。
だからこそ、美味しいというお客さんの声が何よりも嬉しいのでしょう。
美味しい=今までかけてきた情熱と酪農への愛情が認められることだから。
糸島みるくぷらんとさんのお話をうかがって
今回は糸島みるくぷらんとの宮﨑英文社長にお話をうかがいました。

普通の牛乳は、酪農、製造、販売と一つひとつ分かれているイメージがありますが、その全ての工程に酪農家さんたちが一貫して、こだわりと牛さんへの愛情を注いでいることが、この糸島みるくぷらんとさんの魅力だと感じました。
生産過剰気味で牛乳を処分しなければならなかったという状況から脱却しようと、一歩を踏み出したこと。
牛乳を持って一軒一軒営業をかけ、一つひとつ、ほんの少しずつ、売上に繋げたこと。
工場を建設することに賛同が得られなくても、賛同が得られるまで粘り続けたこと。
このように苦しい状況から脱却するための一歩を踏み出す勇気と、やり続ける根気強さを持つことは、なかなか難しいことだと思います。
「何か新しいことをしよう」「何かチャレンジしてみよう」
そう思っても、思うだけで、本当に動きだせる人はなかなかいないと思います。
忙しいからできない、環境が悪いからできない、とどうしても理由をつけてしまうからです。
例えその中で動きだせる人がいたとしても、苦しいこと、嫌なことがあったら諦めてしまうのが大半です。
私自身も、一歩踏み出す勇気とやり続ける根気強さを完全に持ち合わせているとは言えません。
一歩を踏み出すことはいつになっても怖いし、苦しいことと向き合うのは辛く、すぐに逃げ出したくなります。
しかし、宮﨑社長は、酪農家という1年中休みがないお仕事をされている中、一歩を踏み出し、苦しい時期が何年も続いても動き続けました。
宮﨑社長の「勇気」と「根気強さ」は何処からきているのでしょう。
もしかするとそれは、休むことなく一年中寄り添っていた「牛さんへの愛情」からかもしれません。
創業時から変わらない愛情と、その愛情によって作られたこだわりの味。
みなさんもぜひ一度味わってみてください!
糸島みるくぷらんとさんのオンラインショップはこちら

