「新規事業で職人が輝く舞台を」町の鉄工所がキャンプ用品をつくる。株式会社乗富鉄工所。

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“職人が中心”となってさらに会社を輝かせたい

そう、情熱と誇りを言い表すのは株式会社乗富鉄工所取締役副社長の乗冨賢蔵さん。

株式会社乗富鉄工所(以下:乗富鉄工所)さんは水門の設計、製作、施工、保守点検業務を中心事業としている企業。

創業74年を迎え九州北部を中心に公共事業を行い日本のインフラを支えている、私たちの生活になくてはならない存在です。

乗富鉄工所さんの水門事業の様子が分かる動画はコチラ↓

そんな乗富鉄工所さん、実は“水門メーカー”以外の一面も持ち合わせております。

それがこちら!

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そう、こちらは焚き火台!

新型コロナウイルス感染拡大の影響もありブームとなったアウトドア・キャンプ。

そこで大活躍するアウトドア商品の企画、製造、販売をノリノリライフと題して行っているのが乗富鉄工所さんなんです。

「水門事業」と「アウトドア商品」、鉄を扱うという点では結びつくような気もしますが、事業としては全くの別分野ということが想像できます。

一体何がきっかけで、どのようにしてノリノリライフを行うこととなったのか。

そして、ノリノリライフは乗富鉄工所さんにどのような影響を与えているのか。

新規事業創出にまつわる多くの疑問を乗冨さんにお伺いしてみました。

事業創出ノウハウだけではなく、“働く”ことの意義や価値が溢れる乗冨さんのお話。

ぜひ最後までご覧ください!

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新規事業創出の背景と乗富鉄工所に続く想い

水門事業を主軸に我々の生活を支えてこられた乗富鉄工所さんですが、主軸事業とは毛色が違うノリノリライフを開始したきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

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乗富鉄工所が行っている水門事業は、これから先シュリンクしていく市場として語られることが多い事業です。

そう語られる前まで、水門は鉄によって造られていたので定期的に劣化が発生していました。

しかし、今日では水門の原材料はステンレスが主流。

つまり、錆びにくく、劣化しにくい素材によって代替されていったんです。

ですので“新規事業をしたい!”という前向きなきっかけというよりも、企業活動を続けていくにあたり新しいキャッシュポイントを持つことは必須であるという認識でした

水門事業縮小のお話を聞くと新規事業を起こすことは重要だと感じますが、それ以外にも課題を抱えていたと乗冨さんは話します。

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以前の乗富鉄工所は水門事業以外にもゴミ処理場の点検工事も行っていました。

どちらの事業も人の生活においては重要なものですが、実際に業務を行う社員には大きな負荷が掛かっていたんです。

それに伴って社員の退職が相次ぎました。

最終的には1/3ほど職人が減ってしまい、会社として危機的な状況に陥ったんです。

これに合わせて、会社の采配を振る職人さんが定年退職まで間も無くという状況もあり、会社として大きな転換期を迎えました

主軸事業の縮小だけではなく、社員さんの減少、ベテラン職人さんの退職という会社として大きな課題が乗富鉄工所さんに生まれました。

そんな状況において乗冨さんはどのような考えをお持ちだったのでしょうか。

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大きな転換期を迎え不安要素はいくつもありましたが、まず頭にあったのは乗富鉄工所の原点

祖父はモノづくりがとても好きな職人で、それがきっかけとなり乗富鉄工所を創業し、これまで多くの職人さんと共にその技を輝かせてきました。

だからこそもう一度原点に立ち返り、職人が輝く舞台を創りたいと考えました

長く続いてきた乗富鉄工所さんの職人の技。

それをもう一度輝かせたいという乗冨さんの言葉には、熱い想いと誇りを感じました。

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職人が輝く事業を行うことで、“鉄工所”へ対する世間の皆さんが持つイメージにも変化が生まれると考えましたし、

それによって乗富鉄工所へ入社を希望する方が増えたり、職人がやりがいを持てると考えました

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会社を飛び越えた協働で生まれたノリノリライフ。

主軸事業縮小のケアのために、働く社員さんのモチベーションのために、鉄工所に対する社会的なイメージのアップデートのために、そして職人が輝く舞台を創るために、新規事業開発を始めた乗冨さん。

しかし新規事業を創出することは当たり前ですが難しいと乗冨さんは話します。

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先ほど話した課題を解決するために新規事業を起こそうとしましたが、やはり始めから上手くいくわけでありませんでした。

現在はアウトドア商品の製造、販売を行うノリノリライフを新規事業の主軸として行っておりますが、当初は全く違う事業だったんです。

新規事業開発当初に行っていたのは、漁師さん向けや味噌屋さん向けの商品開発。

主に作業の負担を軽減するために、町工場発のからくり道具で仕事をラクにたのしくしよう!というコンセプトをもって商品製造と販売を行っていました。

ですが、会社の第二の軸となるほど大きな反響は得られずもがいていたんです

その後とある出会いが乗富鉄工所さんの現在に繋がっていきました。

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新規事業が上手くいかず頭を抱えていた際に参加した、福岡県が主催するデザイン勉強会でデザイナーさんと出会います。

このデザイナーさんとの出会いが、ブランド創造の重要性や商品デザインの知見を広げてくれたんです

元々は乗冨さんが中心となって社内で行っていた新規事業ですが、デザイナーさんとの出会いがきっかけで、社外の方と協力する流れが生まれます

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ノリノリライフも社外の方との出会いがきっかけで発足しました。

新規事業開発でもがく中、上司から“ピザ釜”を造ってくれないかと頼まれたんです。

もちろんこれまでにピザ釜を造ったことはなかったので、福岡市の著名なイタリアンシェフの話を伺い製作しました。

このピザ釜製造、もしかしたら新規事業に良いのではないかと思い専門家に話を聞くなどリサーチをしました。

ですが、これから町工場がピザ釜の市場に参入したところでインパクトは弱そうという結論に。

とはいえ“家庭用のピザ釜には需要があるのではないか”と助言をいただいたこともあり、アウトドア用品専門店に話を伺いに行きました

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そこでのアウトドア用品専門店さんとの出会い、そしてそこに同行したアウトドア好きな社員がきっかけとなってノリノリライフの種ができました。

その後、デザイナーさんと乗富鉄工所がアウトドア市場に参入することがふさわしいのかどうかを検討して、本腰を入れてアウトドア商品の製造に着手することとなりました

ピザ釜造りの依頼で生まれたご縁によって、主軸事業である水門事業とは違い一般消費者向けの商品開発を行うこととなった乗富鉄工所さん。

これまでとは全く違う分野での事業構築はどのように行われたのでしょうか

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初めてのアウトドア市場参入は、リサーチとプロトタイプ製造の繰り返しでした。

専門家の協力を得てインスタグラムを活用した顧客リサーチを行って参入機会を探ったり、プロトタイプを製造してはアウトドア用品専門店の方にフィードバックをもらったり。

他にも、大学教授の方に様々なサポートをしてもらったり、他の町工場仲間や事業承継を受けるアトツギ経営者仲間など、これまでにはいなかった協力者と支え合って事業を構築しました。

これを1年ほど実施して、2020年にスライドゴトクという商品のテストマーケティングを開始しました。

ノリノリライフによって、新しい仲間や協力者と出会うことができ、この出会いが自分の視野や知見を広げ、現在の事業推進の在り方に繋がったんです

水門業界の縮小や採用難から始まった乗富鉄工所さんの新規事業“ノリノリプロジェクト”。

そのうち一般消費者向けのアウトドア商品の製造、販売事業であるノリノリライフは多くのお客様からの支持を得て拡大しています。

ノリノリプロジェクト|福岡県柳川市の株式会社乗富鉄工所

ノリノリプロジェクトがお届けしたいのはかえがえのない日常を、もっと楽しくするためのプロダクトです。…

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ノリノリライフが生んだ売上以外のかけがえない価値。

多くの専門家と協力して生まれ、成長しているノリノリライフ。

事業規模拡大によって創出された価値は売上だけではないと乗冨さんは語ります。

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新規事業によって起きた変化でまず大きく感じるのは社内の雰囲気です。

からくり道具を開発していた頃や、ノリノリライフのリサーチを行っていた頃は、周りの職人さんからの風当たりは良いものとは言えませんでした。

というのも、中途で入社してきた社長の息子がよく分からない新しいことを始めて、それにコミットしまくっているという状況でしたから、良い印象を持てないのは当たり前です。

しかし、ノリノリライフを推進するにあたり、職人さんが手伝ってくれるようになっていったり、社員さんからのサポートを得ることができたり、今では会社の事業の一つとして認識してもらえるようになりました

新規事業拡大によって社員さんのお考えや会社に対する認識も変化したそうです。

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乗富鉄工所には本社の他に佐賀にも営業所があるのですが、正直佐賀営業所の方とのコミュニケーションはほとんどとれていない状況にあります。

ですが、佐賀営業所の社員さんと私の共通の知人がいまして、ある時に共通の知人が“佐賀営業所の方が、最近うちの会社、新しい事業を始めて良い感じなんですよ”と話していたと教えてくれました。

そんなふうに、普段身近で接しているわけではない社員さんからも新規事業に対する良い印象を持ってもらえているという点は満足しています

当初は水門業界の縮小や採用状況を課題視し新規事業を始めた乗冨さんですが、課題解決の進捗は実際どのような状況なのでしょうか

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まず売上規模で言うと、水門事業にはまだまだ届きません。

ですが、これまでに培ってきた新規事業の土台を駆使して、新規事業の売上が既存事業と同じ比率になるよう目指しています。

そのためには海外まで市場を広げることは必須だと考えていますし、新しい商品の開発も重要です。

また採用においては、離職率も大幅に下がり乗富鉄工所で働く新しい仲間も増えています

道半ばとはいえ、抱えていた課題を解消している乗富鉄工所さん。

新規事業において重要なことを乗冨さんが話してくれました。

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何より大切なのは“辞めない”ということ

新規事業を始めてすぐに会社の軸となることはなかなかありません。

しかし、商品がすぐに大きな売上へ繋がらなくても、それ以外の価値を創り出していく。

それを諦めずにやり続けることで、売上は後からついてくると考えています。

実際、ノリノリライフによって多くの方と協働したり、職人のモチベーションが上がったり、メディア露出機会の増加によって認知度が高まったりと、売上以外の価値が生まれました

なかなか大きな売上に繋がらなくても諦めずに続ける姿勢の根底にはどのような想いがあるのでしょうか。

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職人はカッコいいという認識を取り戻したい

職人がいきいきと目を輝かせて造るモノで社会的な印象を向上させ、憧れられる会社として在りたい。

この想いが一番です。

実際、私は新規事業をしていて楽しいと感じることが多いですし、アウトドア商品によって町の鉄工所に対するイメージも変化していると感じます

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祖父が70年以上前に創業した際、職人の技と誇りを詰め込んだのが乗富鉄工所だと思います。

だからこそ辞めずに、“職人が中心となる会社”としてさらに会社を輝かせたいんです。

本当の意味でクリエティブな鉄工所と言えば乗富鉄工所だと認識してもらえるようになればイイなと思っています

乗富鉄工所さんのお話を伺って

今回お話を伺ったのは株式会社乗富鉄工所取締役副社長の乗冨賢蔵さん。

老舗企業として我々の生活を支えるインフラに関わる事業を主とされている乗富鉄工場さんですが、新規事業を始めたきっかけはいくつもありました。

人材難や主軸事業市場のシュリンク、何より働く職人さんにはもっと輝く舞台があるということ。

これらの課題と向き合い、社外の方々とも力を合わせ、そしてご本人も楽しみながら新規事業開発を行なっている乗冨さんのお話は刺激が多く、とても貴重なお話を聞くことができました。

この記事を読んでくれている学生さんは就職活動を控えている方がほとんどだと思いますが、乗冨さんのお考えに触れてキャリアの選択肢が増えたら良いなと思います。

もっと乗冨鉄工所さんのことを知りたい方は以下のURLよりぜひ様々な魅力をご覧ください!

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