最近、「リクハラ」という言葉を耳にしたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
2021年6月、有名な企業が行う就職活動において、「ハラスメント」が起きていたことが分かりました。
就職活動を行なっている就活生の方からすると「就活におけるハラスメント」を気にせずになんていられないはず。
ただ、このハラスメントという言葉自体、その定義はとても曖昧なものです。
加害者側がどう思おうとも、被害者側が「イヤな気持ち」になったらハラスメントだというケースもあります。
はたまた、被害者側のメンタルが脆いから問題視されるだけであって、加害者側には問題がない、むしろ加害者側がそんなことを言われるなんて可哀想だ、というケースもあるでしょう。
しかし、この議論に決着はありません。人は十人十色、人それぞれ考え方も受け取り方も取り巻く環境も違います。就活生も企業の大人も人間ですから、解釈の仕方は違います。
だからこそ、「これはハラスメントで、これはハラスメントではない」という議論をするのではなく、実際に起こってしまった事実を集めること。そして、この記事を就活生や大人、これから就職活動を控えている方々に読んでもらうことが重要なのではないかと考えました。
そこで我々は「就職活動で感じたイヤなこと」をテーマに、100人の就活生に就活におけるハラスメントのアンケートを行いました。
「就職活動で経験したハラスメント」をテーマにアンケートを行うと、ハラスメントの定義は人によって解釈が違うので、「就職活動で感じたイヤなこと」というテーマでアンケートを行いました。
この記事は「就職活動において就活生が経験してしまったハラスメント」を列挙するわけではありません。
「就職活動において就活生が感じたイヤなこと」を調査し、実態を探ることで、水面下で行われているハラスメントチックな採用や、いわゆる「リクハラ」に対するリテラシーを強化することを目的としています。
※リクハラ:リクルート・ハラスメント
就活に潜むハラスメントの実態を100名の就活生へ調査。
就活生にとって、新卒の就職活動というものは誰しも初めての経験です。
つまり、新卒採用を狙う就活生はみんな“就活の普通”が分からない状態。
面接の上手な受け答え方やESの上手な書き方は教えてくれるかもしれません。
しかし、企業の大人に言われたイヤなことを我慢するべきか否かのボーダーラインのようなものはどこにも書いてありません。
ではどうするべきか。
それはリクハラに対するリテラシーを、社会的に向上させることです。
企業は採用において、リクハラが起こらないように考えなければなりません。
学校期間は就活支援において、リクハラに対する相談窓口や企業へのリクハラ防止促進をしなければなりません。
リクハラが起きてしまう原因は、起こしてしまう当事者のズレた考え方と、そういったズレた考え方が生まれないように取り組むことができなかった企業、その他、採用市場に関わる人々です。
先に書いたように就活生は“就活の右も左も”分かりません。
ただ、共通しているのは就活生が就活をする目的は「自分が志望する企業に入社すること」こと。
誰も“イヤなことを言われたい”とか“傷つくような思いをしたい”というようにハラスメントを受けようと思って就活を行なっていません。
普通が分からない就活生だからこそ、イヤな思いをしつつも、“就活ってこれが当たり前なのかも”と思い込んで我慢する場合もあるかもしれません。
だからこそ、リクハラという重大な問題が起きてしまう前に、自社の採用を見直したり、就活・採用支援を見直す材料の1つとして、この記事が役に立てばいいなと強く思います。
リクハラに対する憤りから、前置きが長くなってしまいましたが、ここからはまず我々が行なった「就活で感じたイヤなことアンケート」についてご説明していきます。
本アンケートは4つの質問で構成しました。
- 就活で感じたイヤなことアンケートの内容はこちらをタップ!
- ・就活においてハラスメントだと感じる経験があったか。あった場合それはどんな経験だったか。
・就活において受け入れられない嫌な思いをしたことがあったか。あった場合それはどんな経験だったか。
・就活において“なぜこんな質問をするんだろう?”、“この質問は採用に関係しているのだろうか?”と感じた経験があったか。あった場合それはどんな経験だったか。
・就活において感じたイヤなことを相談できる人はいたかどうか。加えて、相談した相手の言動に対して感じたイヤなことはなかったかどうか。あった場合それはどんな経験だったか。
というものです。
ハラスメントの定義や考え方は人それぞれなので、質問に深度の差やレイヤーをつけてアンケートを行うことにしました。
そしてこの記事では、質問ごとに結果をまとめていくのではなく、こんな言葉があっていいのかと強く思いますが“ハラスメントの種類”ごとに記していきます。
質問ごとに結果をまとめると、深度が浅い「就活においてなぜこんな質問をするんだろう?」の項目に対して意識が薄れてしまう可能性があるためです。
リクハラ1:企業都合系ハラスメントについて
回答の中で一番大きな割合を占めていたのが「企業都合系ハラスメント」です。
これは、効率よく採用を行うために就活生の権利を無視し、企業側の都合を押し付けているような事象を指します。
それでは就活生の方からいただいた回答をもとにその実態を見ていきたいと思います。
まずは、
『文理問わないということを謳い文句にしているIT企業さんから、理系でなければ内定は出さないと言われた』
というものがありました。
他には、
『人間性を重視した採用を謳っている企業が、申し込みフォーム(履歴書程度)のみで不合格を出していた』
というものも。
つまり、“言っていることとやっていることが違う”という現象です。
これがハラスメントであるかどうかは読者の方それぞれの判断ですが、もし自分が「文系だけど文理不問と書いてあるし、気になる企業だから選考に挑みたい」と思い努力したのにも関わらず、言っていることとやっていることが違う現象によって不合格を告げられた場合、どんな気持ちになるでしょうか。
また、この企業都合系で一番多かった意見が『オワハラ』に近いものでした。
オワハラとは、就活終われハラスメントを意味するもので、要するに『内定を出すから他の企業の選考は受けるな』という圧力をかけてくるというものです。
こんな回答がありました。
『内定とは言われず合格とだけ伝えらえれ、まだ他の選考も控えているので時間をくださいと伝えたところ、枠は少ないから早くしないと落選になるよ、とかなり強めに言われた』
このような内容の回答はかなり多く、企業の方が内定から入社まで、学生をグリップする点において課題を抱えていることが分かりました。
しかし、そのグリップの課題を解決するには、就活生が自社を選んでくれるように、魅力的な企業になるしかないと思います。
少なくとも、内定者をグリップする力を年齢差や立場の違いからくる圧力で補うなんてことはあってはなりません。
また、
『学歴フィルターはあるのかもしれないが、面接した人事の方が“その大学のその学部じゃこのレベルの企業は無理だよ”と明言していた』
こんな回答がありました。
企業が定める採用の本質に対して、どうしても所属大学の偏差値を使って判断しなければならないのであれば理解できます。
しかし、そうではなく、なんとなく慣例的に学歴フィルターを使って就活生を選別しているのであれば、むしろ、採用する側が学歴コンプレックスに囚われているのではないかと思います。
また地域という面においては
『地方出身である私に対して“都会と比べてあなたはこうだから”と決めつける発言をされた』
というものもありました。
また、志望企業・業界フィルターという面もあるようで、
『面接において、どんな企業や業界を狙っているのという質問に正直に答えたら、“あ〜〜、あの会社ね(笑)”と言われ、そのまま不合格になった』
という回答もありました。
採用の本質を明確に持っている企業さんや人事の方からすると、ここに書いた事象というものは理解し難いものだと思います。
ただ、採用の本質を定められていないと、就活生がイヤだと思うことがこんなにも発生してしまいます。
本質を見失っている、もしくは本質に目を向けることができていないからこそ、企業都合系の事象が起きてしまうのだと考えました。
リクハラ2:プライバシー侵害系ハラスメント
正直、このアンケートを始めるにあたり、起こりうるハラスメントは「企業都合系」と「性に関わること」が多いと考えていましたが、企業都合系に続いて多く起こってしまったのがこのプライバシー侵害系の事象でした。
まず多かったのは
『家族構成はどんなものか聞かれた』
という回答でした。
そもそも、採用というのは就活生の可能性を見つけるため、自社との相性を確かめるために行われるものだと思っていました。
仮にこの2つが採用の目的だとすると、家族構成は就活生の可能性にどんな影響を与えるのでしょうか。また、家族構成が企業と就活生の相性にどんな影響を与えるのか気になります。
仮に、「母子家庭、父子家庭は自社との相性が悪いと判断して良いという基準」が企業にあるならば、そんな企業では働きたくないなと思うだけで済みます。
しかし、そんな企業があるとは思いたくないからこそ、なぜ家族構成に執着する質問をするのか気になります。
また、家族に関するもので、
『ご両親のお仕事と年収は?』『ご両親の居住地は?』『ご両親の親密度は?』
という質問をされたという方もいました。
例えば『ご両親の居住地は?』という質問の意図は『ご両親に万が一のことがあった場合に助けに行くことができる距離なのかどうか』というものであるのだとします。だとするとこの質問は理解できます。
しかし、就活生の方が「就活で感じたイヤに関するアンケート」に対して回答しているわけですから、両親の居住地に関する質問の意図が就活生からすると不明だったことがわかります。
また、プライバシーに関する事象で多かったのは
『恋人はいるか』と質問を受けたというものでした。
これ加えて
『その恋人とは結婚するのか』『結婚は何歳でするのか』『恋人とどこまで進んだのか』
と聞かれたというものもありました。
こんな質問をした企業の方は、友人でもない人からこんな質問をされたうえに、状況的に答えなければならない就活生の気持ちを考えられないのでしょうか。
『恋人がいるかどうか』や『恋人との関係性』が採用にどんなふうに関わるのか、全く理解できません。
他にも
『血液型を質問され、メモされた』
『私生活の自分について深く答えさせられた』
『自分は芸能人の誰に似ているかどうかを聞かれた』
『恋人がいないと答えた後に、結婚する気はあるかどうかを聞かれた』
というような、就活生の努力や苦労を無下にするような質問もあったようです。
誰だって、採用試験においてこんな質問をされたらイヤな気持ちになるのではないでしょうか?
リクハラ3:性に関するハラスメント
性の多様性やセクシュアル・ハラスメントが大きな課題になっているにも関わらず、採用にまでこれらの課題が生じてしまうのは、本当に残念に思います。
たまに、性に関わるリクハラの事象に、「OB訪問の中で性行為を強要された」というものを耳にしますが、今回のアンケートの回答にはありませんでした。
しかし、性行為を強要するという事象が起きていないから、性に関するハラスメントは起きていないと判断できるわけではありません。
アンケートの回答の中には
『身体を見られた後に、体型のことについて言及された』
というものがありました。
また、
『性行為における好きな体位について聞かれた』
というものもありました。
さらに
『あなたは見た目がこうだから、と言われ合否を判断された』
というものまで。
ここまで記事を読んでくださっている方はため息しか出ないのではないと思います。
僕は採用をする立場になったとしても、アンケートにあったような発言はしないので、なぜこんなことをしてしまうのか、全く理解できません。
面接官の個人的な興味や、偏見の押し付けにしか感じられないような事象が起こっていることが疑問でしかありません。
リクハラ4:就活生を見下している系ハラスメント
100名の就活生の方がご協力してくれたこのアンケートですが、その回答をカテゴライズしたうちの4つ目がこの、『就活生を見下している系ハラスメント』です。
年齢で言えば就活生の方が下であることは確かですが、そこに優劣はないと思います。
しかし、年齢が上であるとか、雇うのは企業側だとかという理由で、信じられないくらい横柄な面接官もいるものなのだなと知りました。
まず悪い意味で衝撃的だったのは
『面接中、逆質問の時間にて、働くうえで大切にしていることを聞いたら“それを答える必要はないですよね。それを聞いてあなたに何が関係するんですか”と回答を放棄された』
というもの。
他にも
『自分の価値観や考えを話すと、“それ覚悟なくない?”や“根性ないね”などとにかく面接官の根性論思考を崩してくれなかった』
というもの、
『これまでの就活の状況を聞かれたので答えると、“一貫性がないね”と言われた』
というもの、
『普通〜〜はできて当然でしょと言われ続けた』
というもの、
『終始、自分の話を聞いていない様子で、あくびをしたりなど眠そうだった』
というものなど、本当にそこで採用試験が行われていたのかと疑ってしまうものばかりでした。
もちろん、就活生の話し方や話の内容は、面接官が期待していたレベルよりも低いことはあると思います。
しかし、就活生は話そうという姿勢を見せているのに、面接官に聞く姿勢がないと話せるものも話せません。
結局、本アンケートを通して
- アンケート結果はこちらをタップ!
- 『就活においてこれはハラスメントかもと感じた経験がある就活生は10.31%』
『就活において受け入れられない嫌な思いをした経験がある就活生は13.68%』
『就活においてなぜこんな質問をするんだろうと感じた経験がある就活生は37.44%』
『就活において感じたイヤなことを相談した相手の言動に対して感じたイヤなことがあった就活生は2.2%』
という結果になりました。
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最後まで記事を読んでくださった方は、この事実を知り、どうお考えになるでしょうか。
就職活動や、採用に直接関わらない方も、ご自身の家族や恋人が就活においてハラスメントを受けるかもしれないということを考えると、不安しかないと思います。
このリクハラを少しでも減らすには、必ずしも採用や就活に関わる方だけが注意すれば良いというわけではないと考えます。
社会全体として、この事実を課題として捉え、一人でも多くの方が気にしていくことが第一歩だと考えます。
企業をより成長させ、社会に提供する価値を増やすために行われるはずの採用が、一部の企業の大人の私利私欲を満たすためのものになってしまっているのは本当に残念です。
ぜひ、この事実を一人でも多くの人に届けてもらい、大人も学生も、みんなで考えていくことができる社会になっていけばと強く思います。