【株式会社石蔵商店】みんなが知らない“はかりの世界”で、みんなが使う世の中の基準を守る。

1グラムの1000分の1の重さである1ミリグラム。

これがどれくらいの重さなのか想像することはできますでしょうか。

ご家庭にある“はかり”に乗せても反応しない重さでありながらも、1ミリグラムは1ミリグラムなんです。

当たり前のことを言っているかもしれませんが、この“重さ”を手作業で作り出しているのが株式会社石蔵商店さん。

第3回目となる今回のインタビューでは、分銅の製造、校正を行っている分銅製造課に所属されている、勤務30年以上の寺尾浩さん、中途で入社されてから4年目の上野淳一さん、高校卒業後入社されて現在7年目の藤元勇樹さんにお話を伺いました。

分銅の凄み、製造に携わる方々の高い技術力、そしてお仕事に対する情熱をたくさんお伺いすることができ、取材をしている私も終始興奮しっぱなしでした!

この記事を読み終わった頃にはみなさんも分銅の虜になっているはず。

ぜひ最後までご一読ください。

石蔵商店がつくる“重さの基準となる分銅”とは

読者のみなさんの中には、分銅という言葉を初めて聞いたという人もいるかもしれません。

私自身も分銅という言葉は初めて知ったのですが、理科の天秤の実験などで使われている重りだとお聞きし、なんとなく想像することができました。

しかし“はかり”が重さをはかってくれる今日において、分銅はどのようなところで使われているのでしょうか。

寺尾さん

分銅は主に計量器が正確な重さをはかれているかをチェックするために使われています。

分銅が使われている分野はたくさんあるのですが、例えば食品工場関係、医薬品関係などがあげられます

分銅とはつまりはかりの基準となるもの

だからデジタル化が進んでいる今の時代においても必要とされ続けているんですね。

寺尾さん

そうなんです。

みなさんがイメージしやすいものでいうと、スーパーのはかり売りに使われる計量器がありますよね。

そこでは重さを元に商売をするため、計量器に誤差があっては絶対にいけないんです。

そのため分銅を使って定期的に正しい計量ができているか校正という作業を行うのです

スーパーのはかり売りだけでなく、医薬品などを取り扱う方々にとっては少しのズレだけで大変なことになったりもしそうですよね。

食品や医薬品など、普段何気なく見ていた重さの表記ですが、これらの重さは分銅で調整されていたんですね。

寺尾さん

分銅は原器とも呼ばれており、重さの単位の基準となるものなんです。

だからこの分銅が狂ってしまうと、重さをはかるという行為全てが狂ってしまうんですよね。

分銅は表にはでない裏方のものですが、正確でなければならないとても重要なものなんです

普段の生活の中で当たり前に行っている計量ですが、今まで計量器がどのように調整されているのかなんて考えたこともありませんでした。

それに重さの基準となるものについてなんて想像したこともありませんでした。

少しのズレも許されない分銅ですが、小さいものだと1ミリグラム(1グラムの1000分の1)の重さの分銅があるそうです。

一体これだけ正確なものをどのように作っているのでしょうか

上野さんにお伺いしてみました。

上野さん

分銅自体はある程度形ができたものが送られてくるのですが、製造の最終調整は石蔵商店が手作業で行います

分銅はほんの少しヤスリで削るだけでも重さが変わってしまいます。

また風が吹いただけではかりがズレたり、気温や湿度が変わっただけでも重さに影響が出てしまうので、神経を使う緻密な作業なんです

なんと!こんなにも軽くて小さい分銅の最終調整は手作業で行われているみたいです!!

流石に機械を作って製造されているのではないかと思っていたので、これにはとても驚きました。

上野さん
機械を使ってできないこともないのですが本当に細かい工夫はできないため、手作業で行なっています

プロの技術の凄さに感動しました。

ところで先程のお話の中で、風や気温、湿度によっても重さがズレてしまうということをお聞きしたのですが、普段の製造や校正の現場はどのように環境を整えているのでしょうか

上野さん

業務内容によって様々なのですが、部屋を閉め切った状態でエアコンを一定の温度に設定し、季節によって加湿したり除湿したりします。

分銅製造や校正の現場における室温や湿度などには国際的な基準値があるんです

分銅はとても繊細なものなんですね。

私たちが何気なく使用している“はかり”には、分銅という基準があり、この重さの基準をつくっているプロがいることに感動しました。

石蔵商店のはかりをつくるってどんな仕事?

ここまでは石蔵商店さんが製造されている分銅とは、どのようなものなのかについてお伺いしましたが、分銅の製造に携わっているみなさんは、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか。

寺尾さん

私は20キログラム以下、1ミリグラムまでの分銅の調整、そしてお客様の計量機の校正。

それに伴って校正証明書の作成を行っています

寺尾さんは石蔵商店さんに入社して30年以上のベテラン社員さんですが、分銅の製造には20年ほど携わられており、過去には経理や営業職も担当されてきたそうです。

続いて上野さんにお伺いしました。

上野さん

私も寺尾さんと同じく20キログラム以下、1ミリグラムまでの分銅の調整と校正、そして校正証明書の作成を行っています。

また私の場合は1トンまでの校正も行っています

大型の分銅だと1トンのものもあるんですね。

大型のものと小さいものの製造にはどのような違いがあるのでしょうか。

上野さん

大型のものになると力を使うため大変で、逆に小さいものになると繊細で集中力がいるということで大変です。

これらの製造には技術的な違いがあるのですが、それがどちらもできるというのが石蔵商店の強みなんです

では藤元さんはどんなお仕事をされているのでしょうか。

藤元さん

自分はお二方とは少し違って、製造に携わっています。

分銅は鋳鉄、もしくはステンレスから作られており、鋳鉄だと素材のまま塗装も何もされていない状態で届くので、角をとったりと安全な状態にした上で塗装をするという作業を行っています

分銅には鋳鉄で作られたものとステンレスで作られたものがあるんですね。

これらの違いはどんなものなのでしょうか。

藤元さん

主に腐食性の違いがあります。

ステンレスは錆びにくく、鋳鉄は錆びやすいのでその分銅が使われる環境などによって使い分けているんです。

食品関係など水が多いところではステンレスのものが使われます。

また値段もステンレスの方が高くなってきます

なるほど。使われる環境によって金属の特性を活かして製造しているんですね。

日々、分銅の製造に携わる御三方ですが、みなさんが分銅を作る意義、そしてお仕事に対する想いとはどのようなものなのでしょうか。

寺尾さん

生意気な言い方かもしれませんが社会貢献ですね。

人間は、生まれてからずっと重さをはかるという行為を行うので、私たちの仕事は直接的にも間接的にも社会の役に立っており、少なからず社会貢献できているという自負はあります。

そしてそこに誇りを持っています

日々の生活の中や商売を行ううえで重さをはかるということを常に行っていますが、正確な重さをはかることができるのは石蔵商店さんのような企業さんがいるから。

続いて上野さんにお伺いしました。

上野さん

世の中の基準の1つをつくっていることに誇りを持っています。

そ石蔵商店が扱う“kg”は世界でも頻繁に使われる重さの単位です。

長さや速さだと国によって使う単位も違いますよね。

そんな唯一無二な重さの基準となる分銅の製造に携われていること、一端を担っていると思うとすごく意味のある仕事だなと思います

世界で頻繁に使用される“kg”の基準となる分銅の製造に携わっているということは誇りなことですよね。

自分たちのお仕事に誇りを持たれているみなさんがとてもかっこよく見えました。

最後に藤元さんにお伺いしました。

藤元さん

石蔵商店で作られた分銅は、エレベーターやクレーン車など重量の耐久の検査をすることに使われることもあるんです。

そういった点で人の命に関わる大事なことをできているというところに意義ややりがいを感じます

エレベーターに書かれている重量の制限ですが、これらも分銅を基準として検査されているんですね。

普段あまり目にすることはない分銅ですが、様々なところで使われており、私たちの生活を裏から支えてくれていると考えると、石蔵商店さんが行なっている分銅製造はとても意義深いものなんだなと改めて感じました。

世の中の基準をつくる技術を次の世代へ

ここまで分銅というものの重要性についてお伺いしてきましたが、お伺いしたからこそこれから先、この業界を引っ張って行く人材を育成するということはとても大事なことなのではないかと思いました。

そこで社員教育において工夫されていることや意識されていることについて、寺尾さんにお伺いしてみました。

寺尾さん

会社を継続していくために人材育成というのは必要不可欠です。

そして人に何かを教えるとなると、教える側がしっかりと理解してないといけないんですね。

だから自分の知っている知識はしっかりと受けつぐことはもちろん、まだまだ分銅の分野について知らないことも日々勉強しながら後輩に受け継いでいくようにしています

分銅というものは奥が深く、まだまだ知らないこともたくさんあると話す寺尾さん。

後輩たちのため、石蔵商店のため、そして社会のために日々新たなことを勉強し続け、後輩たちに引き継いで行こうという姿からは分銅のプロとしての情熱を強く感じました

では続いて、藤元さんと上野さんに石蔵商店さんの社員教育についてお伺いしてみました。

藤元さん

先輩方と一緒に働く中で、もっとこうした方が良くなるなと感じた際は、年齢・勤務年数関わらずに発言することができるという点は良いなと思います。

もちろん先輩もしっかりと意見を聞いてくださり、改善してくれるんです。

それだけでなく、先輩から様々な失敗談を聞いたり、アドバイスをもらったりとオープンに話してくれる関係性を作ってくださっていて、過ごしやすいですし、とても勉強になると思っています

実は藤元さんは前回の取材でお話をお伺いした枦渕さん直属の後輩みたいです。

前回の記事

前回の株式会社石蔵商店(以下:石蔵商店)さんの取材では… 石蔵社長と営業推進室の石蔵裕晃さん、営業アシスタントの小笠原さんに取材させていただきました。 石蔵商店がたどってきた歴史や、全国でも珍しい「はかりの世界」を存分に語っ[…]

株式会社石蔵商店アイキャッチ

前回の取材で枦渕さんは「自分はなるべく後輩に対してオープンに話すようにしています。例えば自分の失敗談も」とお話しされていました。

枦渕さんのお話の通り、先輩社員さんが作っている石蔵商店さんのオープンな環境は若手社員さんまでしっかりと浸透しているんだなと感じました。

上野さんは石蔵商店さんの社員教育についてどのように感じているのでしょうか。

上野さん

藤元も話したように、意見を柔軟に聞いてくれると強く感じます。

製造においてはより良い製品を造るために社員が協力していますし、次の世代のことを考えた環境が構築されていると思います。

また、私も人材育成をすることがあると思いますので、今行っていることや先輩から教えてもらったことを自分の中で噛み砕いていきたいと思います

やはり石蔵商店さんは社員同士の関係性がオープンで、上司部下関係なく様々な意見を出したり話し合ったりすることができるんですね。

株式会社石蔵商店さんのお話を伺って

今回は株式会社石蔵商店・分銅製造課のみなさんに取材をさせていただきました。

理科の実験で使っていたあの分銅がこんなにも繊細で凄い技術で作られていたと知ることができ、みなさんのお話も興味深いものばかりでした。

また普段はほとんど見たり使ったりすることがない分銅ですが、私たちが様々な場面で使用する“重さ”というものの基準となっており、生活を便利にするだけでなく私たちの安全を守るために様々な場所で使われているということがわかりました。

実際に工場で見せていただいた分銅はとてもかっこよく、計量器を使うたびに今回の取材を思い出すと思います!

みなさんも何か重さをはかる際、石蔵商店さんのように分銅を造るプロの想いを思い出してみると、また社会の見方がが変わるかもしれませんね。

石蔵商店さんについてもっと知りたい方はぜひホームページをのぞいて見てください。

はかり・分銅・温湿度計など計量機器に関してお困りのことは、全て石蔵商店にお任せください。国内有数の設備と技術、そして安心…

第一回目取材記事

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