【株式会社九秀製本ドットコム】〜製本は生きた紙を扱うモノづくり〜

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「紙媒体市場はどんどんと小さくなっている」

デジタルが発達し、スマートフォンやパソコンから情報に触れることが当たり前になっている世界。

そこで過ごす私たちが、紙媒体市場に対してこんなイメージを抱くことはおかしくありません。

しかし、ここまで時代の変化が著しい中で「紙媒体市場」が残っていることには理由があります。

理由があるからこそ、存在し続けている市場です。

福岡にも55年続く、製本企業があります。

今回は、福岡の紙媒体市場を支え、現在も活躍し続ける株式会社九秀製本ドットコムの宮地啓一社長と、専務取締役の宮地恭平さんにお話をうかがいました。

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九秀製本ドットコムは低コスト・短納期を重視し、常に時代を先取りした設備を揃えています。製本のことなら全国に3台、九州では…

九秀製本ドットコムが考える「紙媒体の存在意義」

デジタルの発達というものはとても素晴らしいものです。私たちの生活をとても豊かで便利なものに変化させてくれました。しかし、紙にしかない魅力というものがあります

株式会社九秀製本ドットコムの宮地社長

まず、宮地社長はこのようなお話をしてくださいました。

紙媒体というのは、情報をカタチにすることができます。目に見えるカタチを作ることができるのが紙の魅力です。デジタルの情報はスピードがあってとても便利なものです。しかし、その情報をキャッチすることは、一方通行的である、と考えています

紙媒体とデジタル媒体、この二つを比べるテーマはよく耳にしたり、目にしたりしますよね。

ただ、このテーマについて紙媒体市場で活動されている方のお話を聞いたことがなかったライター砂畑は興味津々でした。

一方通行的というのは、ユーザーが情報をキャッチしたいなと思って調べることや、何かのアプリを開かなければ情報が目に入ってこないという状況を指しています。それに対して紙媒体というのは、ユーザーの目の前に物体として存在することができますまずはそこが紙媒体とデジタルの違いだと考えています

『情報をカタチにするのが紙媒体』というお言葉はとても印象に残るものでした。

しかし、物体として存在できることだけが紙媒体の魅力ではありません。

紙媒体の本や漫画っていうのは、その一つひとつがオリジナルなんです。紙にも種類がありますし、斤量(きんりょう:重さ)も、匂いもあります。

そして、人間というのは五感を大切にしている動物です。だからこそ、紙を手にとってページをめくるという行為に風合いが出るんです。そこが紙の奥深さだと言えます

確かに、同じ「本」という物体でも、ザラザラした触感の紙もあれば、無機質でわざと印象を与えないような紙もあります。

世の中にはたくさんの本がありますし、皆さんも手に取ったことが何度もあると思います。

しかし、その本も一冊ごとがオリジナルだということです。

といっても、紙媒体市場が小さくなっていること自体は事実です。生まれた時からスマートフォンが身の回りにあるような世代の方にとっては、デジタルの方が相性がいいのかもしれません。

と言っても、我々は紙媒体を通して社会に価値を届けていくべき存在なんです。それが我々の経営理念の一つでもあります。なので、これからの市場動向を考えて工夫をし続けなければいけないんです

株式会社九秀製本ドットコムさんの経営理念

製本はモノづくり

ー砂畑さんは、『紙は生き物』という言葉を聞いたことがありますか?

インタビューの途中で宮地啓一社長から、こんな問いかけをされました。

紙が生きているだなんて考えたこともなかったので、聞いてびっくりでした。

製本の仕事は、決められた仕様書通りにきっちりと製本をして、納期までに仕事を終える、これが基本であり、一番大切なことです。

だからこそ設備を良いものにしておくというのは私にとって鉄則なんです。より質の良い製本をすることのできる機械が必要ですし、規格に沿って正確に仕上げることが大切です。しかし、我々の仕事は作業ではなく、モノづくりなんです

取材前に工場の見学をさせていただきましたが、そこにはいくつかの大きな機械が並んでおり、いわゆる『ライン』が作られていました。

しかし、製本というお仕事は、ただ機械が働いているだけではないのです。

製本業というのはファジーな世界なんです。つまり、とっても曖昧な部分があるということです。

もちろんJISの規格があって、紙のサイズだってあります。しかしそれだけではないところが紙媒体の奥深さにも繋がります

紙媒体の面白さについて伺うライター砂畑

先ほど言ったように、紙というのは生き物です。大気中に含まれる水分によって伸び縮みしますし、形が平ではなくなったりします。

例えば紙が1mm伸びてしまったとしましょう。しかし、その紙にはすでに規格に則ったキリトリ線が書かれているものなんです。

では、1mm伸びてしまった紙を、規格に則って裁断するとします。すると、言わずもがな、ズレが生じてしまうわけです

なるほど。紙は生き物という言葉は、変化してしまうということ。

もっというならば、それぞれの質感や重みや匂いがあって、まるで人間のように十人十色であるということのようです。

だからこそ、製本業はモノづくりなんです。

言われた通りに働いて、作業のように機械任せというわけではないんです。紙一枚一枚に特徴があって、それに気がついて、工夫をする。これが製本業の奥深さであって、醍醐味なんです

つまり、製本の質を上げるために優れた機械を導入することが大切な反面、人が関わる重要性も大いにある、というのが製本業であるということです。

製本の質を上げるために、理念を達成するために、設備への投資は重要であると話しましたが、完全なオートメーションというのは難しいものです。

だからこそ、我が社にも働く人がいて、紙という生き物を相手にしているわけです。つまり、この世界が全て機械に代替されて無くなってしまうという将来は、イメージしにくいというわけです

ここまでの社長のお話をうかがって『製本業はモノづくりである』というお話に、とても納得しました。

紙と言っても、質感も重さも匂いも違う。そして紙は生き物ですから、一枚一枚に働く人の工夫が込めてあります。

これも踏まえたうえで、同じ本だとしても一冊一冊がオリジナル、もっというと同じタイトルの本だとしても一冊一冊がオリジナルということなんです。オリジナルを作ることがモノづくりです

九秀製本ドットコムで働くということ〜専務 宮地恭平さん〜

続いてお話を伺ったのは、専務取締役の宮地恭平さん

紙媒体市場が縮小しているとはいえ、55年もの間、福岡の製本会社としてご活躍している九秀製本ドットコムさんの今後の展望をおうかがいしました。

株式会社九秀製本ドットコムの宮地専務

我々の仕事というのは、理念にもあるように『紙媒体を通して、関わる方々を応援する』というものです。ここがブレてはいけませんし、ここがブレないからこそ、こうやって今でも企業が存在しているのかなと思います。

ですから、今後も紙媒体を通じて、社会に価値を与えられる存在でありたいと思っています

宮地社長も、専務も、一貫して経営理念のことをお話ししてくださいました。

理念というものがいかに会社に浸透しているかそしてその理念の意義がどれほど重要か認識していらっしゃる様子がとても素敵でした。

理念に沿って働くことが、社会に価値を届け、従業員に幸せを届けると思います。だからこそ、働く人が働く工夫をすることが大切です。

働くことの意味は人それぞれかもしれませんが、私は、『成長する』ためのものだと考えています

『働く意味』を問われること、もしくは自分に問うこと、学生の方々も就職活動の中で行っているのではないでしょうか。

専務の宮地さんがおっしゃるように、働くことの捉え方は人それぞれですが、それを考えるということはとても重要だというように思えます。

インタビューの中で、宮地専務から

「働く人がいなければ、理念は意味を持たなくなります」

というお話がありました。

その真意を尋ねてみると

私は、小さい頃から、創業者である祖父と、現社長の父と過ごしていました。

だからこそ、経営者の悩みも幼ながらに感じ取っていたように思えますし、今後、自分も経営者になるのだから考えなければいけないというように思っていたんです

宮地専務に働く意味をお話ししていただいている様子

会社が苦しい時期に、祖父からこぼれ落ちた『うちの会社もどこかで経費を削らないといけないな』という言葉をとてもよく覚えています。

その言葉を聞いて感じたのは、働く人の貢献なくして、会社は成り立たないというものです。働く人が価値をうみ、それが会社の価値となって、企業は社会に存在することができます。

だから『働くことはお金をもらうこと』だけではないんだと考えています

小さい頃から、身近に経営者がいた宮地専務。

これまでのキャリアをうかがってみました。

東京にある大学を出て、営業職に就きました。

人と話すことや、自分の意見を発信することが苦手だった自分を変えたいという気持ちで営業職を希望したんです。結局、新卒で入った会社に7年半ほどいました。

その後、いろんな事情があって福岡に戻ることになりました

苦手だからこそ、克服したいという一心で営業職を希望された宮地専務。

その行動には、今後、経営者になるのであれば、人との関わりは重要だから今のうちに苦手意識をなくしたいというお気持ちがあったようです。

福岡に戻ることになっても、製本の仕事に関しては全く経験がなかったので、一年間だけ東京の製本会社で働きました。

製本の技術的な面も、製本業界での過ごし方も学びました

たった一年間で製本業界の基礎を勉強したのであれば、とてもお忙しかったのではないかと思い質問しました。

スケジュール的には忙しくなかったんです。

そもそも機械の触り方もわからないですし、誰かがつきっきりで教えてくれるわけではなかったので、自分から学ぶ姿勢でした。

営業においても、お得意先が与えられるわけなんかなくて、自分で考えて営業をしていました。それでもなかなか結果が出ず、それなのにお金はいただいているという状況で、忙しいというよりも苦しい一年間でした

株式会社九秀製本ドットコムさんの素敵な応接室でインタビューをしました。

経営理念というのは働くうえで、大切なことを示してくれるようなものです。そして、紙媒体の市場は簡単なものではなくなってきているのも事実です。だからこそ、働く意味を考えて、これからも紙媒体を通して、社会に貢献できたらと考えております。

株式会社九秀製本ドットコムさんのお話をうかがって

今回は株式会社九秀製本ドットコムの宮地啓一社長と宮地恭平専務にお話をおうかがいしました。

製本は生きた紙を扱うモノづくりであるとお話ししてくださった、宮地社長のお言葉は、「紙媒体でお客様を幸せにしたい」という理念に向かってとてもまっすぐなものでした。

また、宮地専務がお話ししてくださった「働くことに対する意識」というのは情熱的で、さらに会社の理念から全くブレないものでした。

株式会社九秀製本ドットコムさんのホームページもぜひご覧になってください。

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九秀製本ドットコムは低コスト・短納期を重視し、常に時代を先取りした設備を揃えています。製本のことなら全国に3台、九州では…

九秀製本ドットコム取材②

“紙媒体を通して、関わる方々を応援する” これが株式会社九秀製本ドットコムさんの経営理念。 第一回目のインタビューでは宮地啓一社長と専務の宮地恭平さんにお話をうかがいました。 特に、“紙は生き物である”というお話が[…]

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