どんなものを作るにしても“仕組み”というのはとても重要です。
例えば料理を作るうえで、蛇口をひねれば水が出るのも、コンロのツマミを回せば火がつくのも、前提として“仕組み”が出来上がっているから。
それは皆さんが日頃手にしている製品も同じです。
何気なく使っているボールペンも、それは仕組みによって作られているもの。
おそらく、職人さんが一本一本ハンドメイドしたものではなく、工場で仕組みを駆使して作られたものを手にする機会が多いと思います。
今回ナビラズがインタビューをする中央橘設計株式会社さんは、プラントの設計をする会社。
とてもユニークでお話ししやすい中央橘設計株式会社(以下:中央橘設計)の吉川社長にたくさんお話をおうかがいしました。
ぜひ最後までご覧ください!
中央橘設計のお仕事は“地味だけど派手!?”設計の魅力に迫る!
まずはじめにおうかがいしたのは、中央橘設計さんのお仕事について。
プラントというとなかなかイメージしにくい方もいると思います。そこで吉川社長にご質問してみました。
工場をなんとなくイメージしていただければ良いのですが、工場の中には何かしらの設備がありますよね。
例えば、工場の一階には製品をパッケージに詰めるための設備があって、二階には製品自体を作る設備があるとします。
この設備一式のことをプラントというのですが、中央橘設計ではこのプラントの設計をしています。
その中でも設備と設備を繋ぐために配管というものが存在します。この配管は人間の体で例えると“血管”と言われるんです。この配管設計を行うのが中央橘設計の中心事業です。
プラモデルを組み立てるための図面を作っている感じですね
テレビで工場の生産ラインの様子が映し出され、「これはどんな製品を作っている工場でしょうか」というようなクイズを出す番組を観たことがある方もいらっしゃるかと思います。
中央橘設計さんでは、この設備の設計を行うということですが、吉川社長の考えるプラント設計の魅力はどんなところなのでしょうか。
先ほど中央橘設計ではプラントの設計をしている、と話しましたが、設計のイメージって地味だと思うんです。
実際、設計士は毎日パソコンと向かい合って、とても緻密な作業をしていますし、見た目もやはり地味です。
ですが、そんな設計のお仕事にも“美学”があります。
それは、“地味だけど派手”だということ。
例えば設計士が作った図面。この図面で設備を作り上げる工事業者さんや、実際に設備を動かす方たちはコミュニケーションをとっていきます。
たった一枚の図面ですが、これを何百人、何千人という方たちが目を通すことになります。
図面がなければ関わる人みんなが困惑しますし、図面に不備があればたくさんの方々に迷惑がかかります。
設計自体は地味かもしれませんが、設計士が情熱とプライドを込めて作った図面はたくさんの方々にとって、なくてはならないもの。
地味だけど派手、そんな設計の仕事がとても好きなんです
設計士さんが作った図面は多くの人を助けます。
このように“直接的”ではなくても、誰かのため、社会のためになっている設計のお仕事にとても魅力を感じた吉川社長のお話でした。
中央橘設計・吉川社長の考える“社長の仕事”とは。
続いておうかがいしたのは、吉川社長ご自身について。
お父様が創業された中央橘設計の3代目社長としてご活躍されている吉川社長ですが、これまでどのようなキャリアを築いてこられたのでしょうか。
初めて父の仕事を意識し始めたのは大学生の頃でした。
福岡の大学で経営を勉強していた私ですが、入学して1年半ほどたった頃に会社の財政状況が落ち込んでしまったんですね。
両親から直接何かを言われたわけではないのですが、“大学にお金がかかる”ということは分かりましたし、私のいないところで苦労している二人の後ろ姿を見ていたので、大学中退を決めました。
ただ、両親に気を遣わせたくもなかったので、理由もなく“大学を辞める”と伝え、中央橘設計で働き始めたんです。
とはいえ、全くと言っていいほど設計に関する知識がなかったので、他人の飯を食うではないですが、別の会社で設計の武者修行に行きました
少しでもご両親を助けられるように、と大学を中退し設計の世界に飛び込んだ吉川社長。
その後、設計士としてのご経験を積まれて、中央橘設計へ戻られます。
戻ってきてからは設計士として仕事をして、その後、次長、部長、常務、専務として少しずつマネージメントの仕事をやり始めました。
2代目の社長は私の叔父がしていましたが、高齢になったこともあり2020年4月より私が3代目の社長となりました
社長という役職につかれる際は、どのようなお気持ちやお考えを持っていたのでしょうか。
役職に就いてからは特に、会社に対する責任感はを強く持つようになっていました。
なので社長になって初めて責任を感じたということはないのですが、最終的な意思決定をするのは社長の仕事ですので、その点はとても大切にしていきたいと考えました。
ですので、社長になってすぐに社員のことを考えると“ここは変えた方が良い”と感じるところは小さなことでも変えたんです。
例えば、トイレの設備を一新するとか、有給休暇をとりやすい環境にするとか、半休制度を作るとか、朝イチのラジオ体操の時間を変えて自由参加にするとか。
実際、設備や仕組みを変えてみると社員からの評価は好調でしたし、少しでも社員が元気になれたのなら良かったなと思いました
小さなことでも会社の仕組みを変えるというのは簡単ではありません。
その点、まず力を入れて変化させていったのはどのようなお考えからだったのでしょうか。
明るく、元気で、健康的な会社にしたかったんです。
いくら技術が高くても、暗い雰囲気の会社では何かとストレスが溜まると思いますし、客先にもそれが伝わってしまいます。
それに働きやすい環境をつくるというのは会社において重要なことだと思うんです。
他にも会社を明るく、元気で、健康的な会社にするために挨拶をしよう!ということを社長になってすぐに社員に伝えました。
もちろん変に明るく大きな声で挨拶する必要はないですが、その声かけ一つで何かが変わることだってあるかもしれないという思いがあったんです
社長というお立場になって、設計のお仕事からは離れている吉川社長。
これまでの長いキャリアの中を共に歩んできた設計というお仕事から離れることには、やはり寂しさを感じたのでしょうか。
設計の仕事がとても好きですし、もちろんそのような気持ちもありました。
ただ、私の仕事は設備を設計するものから、会社組織を設計するものに変わったんです。
設計の仕事をしながら社長の仕事もしようと思うと、どっちも中途半端になると思ったんですね。
なので、今は寂しさを感じるというよりも“社長として”というような考えで毎日を過ごしています
中央橘設計が設計する“未来”
ここまでは中央橘設計さんの“設計”というお仕事と、吉川社長ご自身についてお話をいただきました。
続いておうかがいしたのは中央橘設計さんのこれからについて。
中央橘設計さんのこの先の展望について吉川社長はどのようにお考えでしょうか。
まずは、設計の技術を常にアップデートしていきたいです。
新しい技術やツールが次々と生まれてくるこの時代ですが、時代から乗り遅れないよう社内体制を整えていきたいと思っております。
あとは、社員たちのスキルに対して適切な対価を払っていきたいと考えています。
よく社員にも“構えは中小企業、仕事への対価は大企業”というような会社作りをしていきたいと話します。
設計士という仕事自体、技術者の人数が全国的に減少している傾向があります。
その中で、中央橘設計で働く社員は設計業界内では技術力は高い方だと思いますし、何と言っても設計に対して情熱を持っています。
そんな社員に対して様々な形で対価を支払うのは会社として当然ですし、この点について様々な視点で考えていくことも私の仕事だと思っています。
最後は、未来をつくる会社でありたいなと思います
“未来をつくる”ですか?
今はまだ、私たちの世代も社会をつくるために貢献することができていると思いますが、この先の時代をつくっていくのは若い世代の方や今の子どもたちです。
私にも子どもがいますが、やはり10年後、20年後も明るく体力のある会社でなくてはダメだと思うんです。
加えて、この先の社会をつくる一端を担わなくてはならない唯一無二の会社になっていかなければなりません。
だからこそ、設計の技術を高めることはもちろん、設計だけに囚われない事業開発も場合によっては必要だと思っています。
現在、中央橘設計で働く人だけが満足するのではなく、客先やこれから一緒に働いてくれる人、そして未来の子どもたちのために、今を頑張らないといけないと考えています
“これから一緒に働く人”というお話が出ましたので、中央橘設計さんにはどのような学生が似合うか尋ねてみました。
先ほど設計については話しましたが、やはりまずは設計の仕事に興味がある人が一番良いかと思います。
設計の仕事がしたい!という方でも良いと思いますし、“地味だけど派手”という美学に共感していただける方も向いていると思います。
自分が作った図面が回り回って、製品を購入したお客様の満足に繋がるというような魅力って地味ですが、何か良くないですか?
加えて、どんどんと設計士の人口は減っています。これは逆に言えばチャンスでもあり、とてもレアな人材としてキャリアを描くことができると思います。
もちろん設計士として一人前になるまでに10年くらいはかかりますが、その期間を大切にすればレアなスキルを持って社会で活躍できますし、しっかりとした対価も見込めると思います。
このような点に魅力を感じてくれる方は、設計の仕事が向いているかと思います
中央橘設計株式会社さんのインタビューを通して
今回は中央橘設計株式会社の吉川社長にインタビューをしました。
設計のお仕事自体は地味だと話す吉川社長ですが、設計士の仕事によって出来上がった図面がどれほど世のため、人のためになっているかを考えると、とっても魅力的だと感じました。
また“設計は地味だ”と話す吉川社長ですが、その言葉の裏側には“設計に対する誇りや愛情”を感じました。
設計のお仕事や中央橘設計さんに少しでも興味を持った方はぜひ、HPを見てみてください!
これまで気が付かなかった“設計の魅力”をたっぷりと味わうことのできた、吉川社長のお話でした。